太宰府天満宮にて
2024年6月14日から16日まで
ご来場ありがとうございました!
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インタビュー
話し手:
川﨑雄平(Pages ディレクター、本屋青旗店主)
瓜生賢太郎(Pages ディレクター、INN THE PARK 福岡 支配人INN THE PARK 福岡 支配人)
東 直子(Pages ディレクター、TOKYO ART BOOK FAIR プロジェクトマネージャー)
聞き手:
黒木 晃(Pages アドバイザー、TOKYO ART BOOK FAIR ZINE’S MATEエリア ディレクター)
インタビュー収録日:2024年5月14日
ーまず最初に、福岡でアートブックフェアを始めようという話になったのは、どういうきっかけだったんですか?
川﨑雄平(以下、川﨑):そうですね、僕が福岡で本屋青旗(以下、青旗)を始めてから、いつかアートブックフェアを開催できたらという気持ちはありました。でも始めてすぐだと、まだ土台が整ってないというか。然るべきときに、然るべき人たちとやれるときが来たら、そのときはやりたいと思っていたので、具体的にいつやるかというのはそんなに考えていませんでした。それで、東さんが拠点を福岡にも構えられて、お店に遊びに来てくれるようになり、僕がアートブックフェアをやりたいと思っているのを、どこで東さんが聞いたのかはわからないんですけど、東さんが「アートブックフェア、まだやりたいと思ってますか?」と聞いてくださって。自分一人じゃもちろんやれるとは思ってなかったので、でも東さんが一緒にやりませんか?と言ってくれて、東さんとだったら良いブックフェアにできるんじゃないかと思い、ぜひ一緒にやらせてくださいと言ったのが最初です。
ーそれはいつ頃の話なんですか?
川﨑:どれぐらいだろう、2年前くらいですかね。記録を遡ったら、去年の夏ぐらいにはもう動き始めてたので。
東 直子(以下、東):そうですね、私は川﨑さんがアートブックフェアをやりたいって言ってたのを、川﨑さんから直接聞いてるんですよ(笑)。私が約2年前に福岡に拠点を移してから、青旗が福岡にあることが、心のよりどころみたいな感じで、すごく私の中で大きくて。それでお店に通う中で川﨑さんが「アートブックフェアいつかやりたいんですよね。」とおっしゃっていて。
川﨑:あ、直接言っていましたか(笑)。
東:そうそう(笑)。でも、そのとき私は、川﨑さんが立ち上げるものに対して、自分が何ができるかな?とか、TOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)とは違うことで、自分は何がしたいかな?って考えて、誰かと誰かを繋ぐとか、交流の場をあまり東京だと設けられないことが最近多かったので、何かそういうとこできたらいいなみたいなことを話していて。それから福岡で暮らしていく中で、いろんな面白いデザイナーさんとかアーティストさん、場所とかを知っていくなかで、本当に福岡でブックフェアをやりたいなっていう気持ちが高まっていきました。福岡の人たちを外にも紹介したいし、福岡の外から来る人を福岡の人に紹介したいなと。そのときに、私の中で大きかったことのひとつが、川﨑さんが何かの会話で、「なにか東京の人が羨むようなことをしたい」ってふとおっしゃったんですよ。なんかそういう考えを持ってる川﨑さんとだったら、いい化学反応が起きそうだし、TABFともまた違う、福岡らしいものになるんじゃないかなと思って、動き始めました。
ーそういう経緯だったんですね。
東:はい。その後に、瓜生さんが合流してくださった感じです。瓜生さんは本当に福岡のカルチャーシーンというか、いろんなところにネットワークがあって、人と人を繋ぐ力がある人だし、アイデアもある。私達の潤滑剤じゃないですけど(笑)、すごくいいバランスをとってくださる本当に重要なキーパーソンです。
瓜生賢太郎(以下、瓜生):僕はもともとイベントの企画をすることが多くて、基本的には1人で何かやるということばかり積極的にやってたんです。福岡は小さい街だから、あそこで遊んでた人とか、あの店で働いてた人が独立してこの店を作ったのねっていう、流れみたいなものがわかることが多いんですけど、青旗は突然降ってきた感じで、結構衝撃だったんですね。でも、話していくと自分と川﨑くんは同い年だってこともわかって、なんか気も合うなと。その川﨑くんが何かやろうとしてる。僕は何かがごちゃまぜになること、今まで交わってなかった人たちが交わっていくみたいなことにすごく興奮するので、僕自身は何か表現ができるわけじゃないんですけど、僕が入ることでより混ざるなら、ぜひ関わりたいなと思ったという感じです。ちなみに、東さんとの出会いは、それこそ黒木くんが福岡に遊びに来たときに、長尾(周平)さんたちと飛車角に呑みに行ったときですね。
東:飛車角行きましたね!ドープな居酒屋さん(笑)。
瓜生:そこからもう僕の中で既に混ざるが始まってて、東さんと川﨑くんも交わって。何て言うんでしょう、ちょっと言葉があんまり出てこないけど、アベンジャーズ感みたいな、すごい興奮するんです(笑)。
ーなるほど(笑)。それでじゃあ実際に始めようとなったときに、さっき東さんがTABFとは違うことをと言ってましたけど、どういうフェアにしようみたいなことは、最初に話したりしていたんですか?こういうフェアのあり方がいいんじゃないかとか。
東:そうですね、わかりやすい福岡らしさっていうのは、まだ模索中という感じはあるんですけど、どうでしょう。最初の頃、瓜生さんと川﨑さんに「福岡らしさって何ですか?」ってことを質問したときに、瓜生さんが「同窓会がしやすい場所」と言っていて、それはたぶん、街の規模は大きいけど、程よい大きさだからこそ、みんなが何かするって言ったときに、ガッと集まれるのが特徴なのかなと。お祭り文化というか、人が集まれる文化があるところに、もうちょっと深度のあるものを組み込んでいけると、福岡らしく、かつ福岡の人たちにも新鮮に思ってもらえるイベントになるのかなと思いながら、今組み立てている感じです。
ー川﨑さんはどうですか?
川﨑:僕はずっと福岡にいる人間なので、どちらかというと福岡にないものを持ち込みたいっていう思いが、思いというか、そういうことができたらいいなっていう気持ちがありつつ、かといって最初の話と重なるんですけど、TABFがそのまま福岡にきましたみたいなものだと、それは何かコピーみたいなこと、ローカル巡回みたいな話になる。もちろん、それはそれで魅力的だとも思うんですけど、どうせというか、せっかくやるんだったら、福岡の人にとって鮮度があると同時に、福岡以外の人たちから見たときに、また違う、その人たちにとっても、違う鮮度が生まれるものにしたいっていうのは、最初から今までずっとあります。
ー川﨑さんが青旗を始めたのも、福岡にこういうお店がなかったからと、以前話されていたのが印象に残っています。青旗を始めた流れと、ブックフェアを始める流れはひと続きに結びついてる感じですか?
川﨑:そうですね、結びついていますね。もちろん店とブックフェアでは規模も、関わる人の数も違うし、目を、気を配らないといけないところは多岐にわたるので、全然違うと言えば違うんですけど、僕の中では割とやってることは同じではないけど、でも態度としては同じ気持ちですね。青旗を作ったときも、何か自分がいいと思うものと、この町で良いと評価されているものにギャップがあったので、それを埋めるために作ったみたいな、ざっくり言うと。なのでその延長というか、拡大というか。お店にいるとやっぱり、来てくれる人に対してしかそれを提示できないので、外に出ていかないといけないっていうのは常々思っています。
ー会場となる太宰府天満宮については、どういった経緯で決まったんですか?
川﨑:きっかけは、太宰府天満宮で開催されるイベント企画などの管理統括を担当されている方が、青旗にお客さんとしてよく来てくださっていて、ご相談したというのが一番最初ですね。太宰府天満宮自体、天満宮としてもちろん歴史と格式のある場所でありながら、現代美術の展覧会も行っているという、自分も大好きな面白い場所です。そこで美術やアートにまつわる本のイベントができるというのは、場所の歴史とも紐づいて、すごくいいことだなと思ったので、そういう繋がりもあり、ご相談して、受け入れてくださったという経緯です。
ー太宰府と聞くと、福岡市内から遠いのでは?と思われるかもしれませんが、実際そんなに遠くないんですよね。
川﨑:そうなんです。青旗からだと電車で30分くらい。電車の種類にもよりますが。福岡の人って、コンパクトシティとか言われて、市内で好きなお店とか、よく行くお店がギュッと集約されてるので、ちょっと離れるとすぐ遠いって言うんですよ。僕も言うんですけど(笑)。
ーわかります。福岡に遊びに来ると、福岡の人から遠いって言われる距離が、全然遠く無いじゃんと思うことがよくありました(笑)。だから出展する人たちも、太宰府天満宮でフェアが終わった後、市内で夜ご飯を食べることももちろん出来るし、お客さんにも、太宰府だけじゃなくて、市内や近隣の地域も一緒に楽しんで欲しいですね。
東:はい、ぜひそうして欲しいです。Pagesでアートブックに触れていただいて、太宰府天満宮の境内に点在さしている現代アートの作品や宝物殿で開催されているネルホルの個展もまわって、今回フレンズ企画でご協力いただいているショップやギャラリーなどもたくさんありますし、福岡のカルチャーやアート、音楽とか食も存分に楽しんで帰ってもらいたいです。
ーFABFの出展者については、出展者一覧で日本のどの地域から来てるかわかるのも、個人的に面白いなと思いました。アメリカのPrinted Matterが主催するアートブックフェアだと、アメリカ拠点の出展者は州ごとで紹介されていて、アメリカの広大さを感じてたんですけど、こうやって日本もエリア別で見ると、いろんな地域から参加されてるんだなっていうのが知れて良かったです。
東:北は北海道、南は沖縄まで参加していただいているので、私も今回のPagesで初めて出展者一覧に都道府県を掲載してみて、この人はここを拠点にしているんだとかを知ることが出来て面白かったです。
ーそれに、韓国や中国、台湾からといったアジアの出展者も来てくれているのが嬉しいですね。
東:そうですね。韓国・ソウルの書店YOUR-MINDの店主で、韓国のアートブックフェア「Unlimited Edition – Seoul Art Book Fair」を運営しているIroくんが、韓国でも宣伝するねと言ってくれて、そのおかげかなと思っています。
ー福岡でアートブックフェアが開催されるのは今回が初めてだと思うんですが、宣伝をしていく中でどういう反応がありましたか?例えば、東京や他のアートブックフェアに既に行ったことがある人が多いのか。まだあまり知られていないのかなど。
瓜生:やっぱり、僕もそうですけど、アートブックフェア自体まだまだ知られて無いないのかな。Zineを手に取るみたいなことが、やっとこの数年で、福岡のいろんなところでちょっとずつ増えてきてるような感覚はありますけど、こうやって何組もガーッと集まってお祭りっていうのは、まだまだ経験されてなかった方は多いと思います。それは僕も含めて。
東:私の周りの福岡の人は、TABFに行ったことがないっていう人が多いので、初めてアートブックフェアを体験してくれる方がたくさんいるんだなって思うと、ちょっと緊張感もあるなって思ったり。あと、自分がTABFを始めたのがもうかなり前なので、今と状況は違うと思いますが、アートブックフェアって一体何?っていうところから始まって、どれだけの人が来て、実際にアートブックを買ってくださるのかは、まだまだ未知数だなと思っていて。TABFも、何回か開催するうちに見に来るだけじゃなくて、本を選んで買いに来るっていう人がどんどん増えた経験があります。ブックフェアでは、一般書店に並ばないようなユニークな本が一堂に揃うので、もちろんワイワイ楽しんでいってほしいですけど、本当に貴重な機会なので、本を手にとって、実際に買っていただけたら嬉しいなと思ってます。
ー川﨑さんは、開催が決まってから、お店のお客さんの反応などはどうですか?
川﨑:青旗はアートブックを扱っている店なので、来てくれるお客さんは割とアートブックフェアを知っている人が多いです。でも、肌感としては、アートブックフェアは知ってるけど、実際に行ったことがない人はやっぱり多いですかね。お店でコミュニケーションを取れてるお客さんは興味を持ってくれていると思うんですけど、そうじゃない人たちにもやっぱり来てほしいので、そういうところは、これからもっといろんな人に知ってもらうことを頑張らないといけないなとは思ってます。
ー本を作った人に直接会って話を聞けたりとか、そういうダイレクトなコミュニケーションは、本屋さんではなかなか出来ない体験ですよね。
東:全国各地から作り手の人がやってきて、普段はそれぞれ小規模でやってた人たちが集まることで、違う都市だったり、違う国、地球の反対だったりとかで、同じように頑張ってる人がいるんだと知れることは励みになると思います。何年かブックフェアをやってると、お客さんと出展者の繋がり、出展者同士の横の繋がりとかが生まれることで、ブックフェアで出会ったメンバーでこういう本を作りましたとか、来場者だった人が次の年は出展者になってくださったりっていうサイクルが生まれている気がしています。そういうことが福岡でも生まれると、めちゃくちゃ面白くなりそうだなと思います。
ーそうですね。いろんな価値観を持った人がこんなにいるんだっていうのが体感出来るのも魅力ですよね。
東:何か生まれる気配がすごいたくさんしていて、わくわくします。フレンズの企画でも、本当に福岡の皆さんの愛情を感じていて、トートバッグ置かせてくださいとか、宣伝にもご協力くださって、こちらがリターンできることってSNSでご紹介しますとか、そんなことしか今はないのに、皆さんすごく自分事のように応援してくださって、それに結構感動してます。福岡すごいって思いました。
ー会場で楽しめるおすすめの企画はありますか?色々あると思いますが。
瓜生:そうですね、やっぱり福岡といえばのON AIRブースなんですけれども、最近毎週やってる「(((COFFEE TALK)))」っていうラジオ番組があって、これが現場で生放送される予定です。今回は余香殿の中にラジオブースがやってきて、視覚的にも楽しいし、おそらく出展者さんたちの中からゲストで出てくる方たちもいらっしゃると思います。太宰府の天満宮の参道を散策しながらとか、会場にいなくても聞けると思います。
東:あとは、フェアのコンテンツで言うと、コミュニティー協定について考えたり、学んだりできるリーディングルームがあります。これは、コミュニティ協定を掲げるだけじゃなく、フェアとして何ができるかなと考えた案なんですけど、美学研究者の村上由鶴さんと、MINOU BOOKSの石井勇さんに選者になっていただいた本を手に取っていただけます。他にも、TOKYO DESIGN STUDIO New Balanceによるフリーマガジン「NOT FAR」のスペシャルバージョンの配布や、THREEさんによるインスタレーション、杉工場さんによるReading Roomの家具提供もあります。写真家の川島小鳥さんと、イラストレーターの宮崎知恵さんのスペシャルなZineが作れるワークショップとか、先ほどお話しした、YOUR-MINDのIroくんのトークだったり、本当にイベントも盛りだくさんになっています。
川﨑:あとは、出展者のポッポコピーさんと、マシューさんというシルクスクリーンの体験とかもあったり。
東:高山活版社さんの活版印刷体験もあります。高山活版社さんは今回印刷協賛をしていただいてるんですけど、本当にサポートいただいています。あと、瓜生くんフード企画も楽しみです!
瓜生:はい!フードもね、面白いお店が並びます。会場の文書館の前にフードエリアができる予定です。
東:あと、FABFの会期中には、太宰府天満宮宝物殿で、Nerholの展示をご覧いただけます。
ーちょうど同時期に開催しているんですね。
東:はい、観にきましたがとても良かったです。太宰府天満宮は、歴史をアーカイブするだけじゃなく、未来を向きながら再構築したりもされているところで、Nerholにぴったりな場所だったし、新作もとても良かったです。あとは、境内のいろんな場所にアート作品が点在していて、ライアン・ガンダーとか、サイモン・フジワラ、ローレンス・ウィナーの作品が観れるので、そちらもぜひお見逃しなく。
ーあと、六本松蔦屋書店でもポップアップがありますよね。
東:ありがとうございます!そうなんです。5月29日(水)から6月20日(木)まで六本松蔦屋書店さんで、Pages出展者の約50組が参加してくださるポップアップイベントを開催しています。出展される方々の本が一堂に見れるので、事前に知ってもらえるとフェア当日をより楽しんでいただけるかなと思います。逆に、フェアであれを見逃しちゃったっていうのがあれば、復習でまた足を運んでもらうのもいいかなと思います。
ーいいですね。六本松蔦屋書店の下の階にあるスーパーもいいですよね。この前行った時にすごい大きいおにぎりを買っちゃいました(笑)。
東:よく知ってますね(笑)。
瓜生:科学館もあって、プラネタリウムもありますよ。あと、僕のおすすめポイントはやっぱ長尾美術の長尾周平さん、恵理子さんのデザインかな。ポップアップやフレンズのお店で買えるトートバッグも良い感じで、SNSや会場全体のお仕事にも注目してほしいですね。
東:メインビジュアルやSNSもかわいいです。毎日見てテンション上げてますが、Webは開催までのカウントダウンが出てくるから見たくない(笑)。
ー秒刻みで減っていくのが運営側にはしんどいかもですね(笑)。
川﨑:あれは圧力を感じます(笑)。
東:Webを作ってくれた白石さんからのエールだと思ってがんばります!