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Fukuoka Art Book Fair

太宰府天満宮にて

2024年6月14日から16日まで

ご来場ありがとうございました!

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インタビュー

Vol.2 アートブックフェアを福岡で開催する意義

話し手:
長尾周平(Pages アートディレクター、長尾美術)
瓜生賢太郎(Pages ディレクター、INN THE PARK 福岡 支配人)

聞き手:
黒木 晃(Pages アドバイザー、TOKYO ART BOOK FAIR ZINE’S MATEエリア ディレクター)

インタビュー収録日:2024年5月20日

ーPagesのアートディレクターを担当されている長尾美術の長尾周平さんと、ディレクターの瓜生賢太郎さんに、福岡でアートブックフェアを開催する意義について話を聞きたいと思っています。まず、長尾さんは今回のアートディレクションの依頼を受けてから提案まで、かなり短期間で制作されたと聞いています。実際どれくらいの期間だったんですか?

長尾周平(以下、長尾):たしか2週間いかないくらいの期間だったかな。

瓜生賢太郎(以下、瓜生):そうですね、1週間とか、10日くらいでしたね。

長尾:今振り返るとすごい(笑)。でも経緯はいろいろあれど、ディレクターの川﨑くんが、僕たちは長尾さんが良いと思ったものを良いと判断するからと言ってくださって、まずその言葉がすごく嬉しかったです。

ー実際制作する上で、難しさを感じた部分は?

長尾:後任としてアートディレクターを引き継いだということに関しては、全然気にしていなくて。手を動かし始めるときも、自分には自分のやり方があるから、時間があろうがなかろうが、それをやるっていうのは変わらないと思っていたんです。でも運営の皆さんがどれだけ今回の出来事で苦労されたかとか、実際に出展するか迷ってる人たちもいることを知っていったときに初めて代役の難しさがのしかかってきたというか。経緯がセンシティブであったことは間違いないので、その中で新しいのを提示することの難しさはやればやるほど、手を動かせば動かすほど、残り時間が短くなればなるほど、逆に増していったっていうのは一つ。

ーなるほど。

長尾:もう一つは僕自身、東京から福岡に戻ってきて8年くらい、もしかしたら何も福岡の中のことを知らなかったら、そんなに迷わなかったかもしれない。だけど関わる人たちのこと、福岡の空気感とか、太宰府には他の仕事もあって通っているので、解像度が高くなってきたがゆえの、福岡を代表する何かを作ることのプレッシャーというか。やっぱり必然的に福岡でアートブックフェアをやる意味は?って誰もが考えると思うんですよね。海外だけじゃなく日本でも近年どんどん増えているなかで、福岡でやる意味はなんなの?って聞かれることは、ビジュアルに関わらずあると思うんですけど、じゃあ福岡らしさをこのビジュアルでも定義しなきゃいけないのか?とか、そんなことも考えて、うどんでロゴを描いてみたり(笑)。

ーそんなことも(笑)。

長尾:だから、そこの二つですかね。後者はどの地域のフェアでも、ビジュアルを作る人にはやっぱりのしかかってくるプレッシャーかもしれないですね。

ーうん。僕は長尾さんとは大学時代からの友人なので、福岡に拠点を移されて、出身地とはいえ、デザインの仕事を本当にゼロからやっていくところをずっと見ていて。長尾さんがいろんな人たちと知り合って、もちろんそれは長尾さんが一つ一つ仕事を通して信頼を築き上げながらやっているからこそだけど、福岡の人たちは、信頼した人に対して、また自分が信頼する他の人を繋いでいくみたいな、人同士が繋がっていく関係性が、すごく強いんだなと感じていました。大きい都市なはずなのに、すごく小さく感じるというか。Pagesの成り立ちについても、個人的な感覚ですが、そういう福岡らしさを感じています。

瓜生:確かにそうですね。僕は正直、アートブックフェアについてとか、そもそもそのアートブックとは?みたいな部分を、他のメンバーより深く理解できてるわけじゃないと思うんです。だけど、僕は性格的におせっかいなので、今言ってたみたいに、この人は信頼できる、だからもっと広げたいとか、みんなに知ってもらいたいみたいな気持ちが結構あって。だから川﨑くんから最初アートブックフェアの話を聞いたとき、迷わず、やるって思ったし、自分がどんなことができるかはあまり考えてなかったけど、とにかく知ってもらうとか、僕がいることで、繋がらなかったところが繋がるなら本望だし、いろんなところが混ざっていく感じになれるんだったらと思って参加しました。こういうまぜこぜになるお祭りが、少しずつ増えてきてるけど、まだまだ福岡は少なかったから、長尾さんはたまに、「より良くするんだ」っていうことを、これは川﨑くんもそうなんですけど、よく言ってるなって思って、僕も「より良くする」をしたい。そこにすごく共感して参加しています。

ー長尾さんはどうですか?そういった意識は。

長尾:Pagesを開催する経緯から言うと、福岡でアートブックフェアが始まるっていうのは、まずはやっぱり「待ってました!」っていう思いで、その思いは少し時間を遡ると、アートブックを専門として扱う本屋青旗さんを、川﨑さんが始められたときも思ったし。というのも、僕自身がすごくアートとかデザインで救われているというか、やっと自分の居場所が見つかって、そこからちゃんと社会に関われるようになった。そんなに真面目な話でもないんですけど、ちゃんと人として生きられるようになったのがそういうもののおかげだったから。でも福岡は、僕が8年くらい前に戻って来たときに、オープンにそういうものを扱ってるお店、これから社会に関わる若い人たちが関われるような場所がなかったと思うんですよね、開かれた場所が。まずは本屋青旗さんのような場所ができることで、やっぱり救われる人たちや、未来が変わる人たちもたくさん出ると思うし、そこからさらに規模の大きな、アートブックのお祭りが福岡でできるっていうのは、それはもう嬉しいことっていうか。

ーそうですよね。

長尾:それと、福岡に戻ってきて一番びっくりしたのは人の良さ。みんなオープンで優しくて、ご飯も美味しいし、都会だけど暮らしやすい。本当にたくさん良いところがあると思ってるんですけど、そことある種表裏一体で、古いしきたりや考えが結構残ってたりとか、よく言われるのは、男尊女卑がまだまだあるとか。伝統を大切にすることは福岡や九州の良いところでもあるけど、これからの時代では、そこにクエスチョンマークを持たないといけない地域でもあると思うんですよね。その一つの支えになるのがアートだと思ってるので、仕事として楽しいっていうのももちろんあるんですけど、そういうものに関われることで、この地域をより良くできることへのやりがいっていうのは大きくあるかな。

ー今回、ブックフェアの会場が太宰府天満宮で、長尾さんは、太宰府天満宮にある「梅ヶ枝餅 やす武本店」のお仕事もされていますが、太宰府天満宮で開催されるっていうことに関してはどうですか?

長尾:太宰府は歴史的に見ても九州の文化の中心みたいなところがあって、そこでアートブックフェアをやらせてもらえることは、一つページを刻める嬉しさみたいなものがあると思っています。あとはやっぱり、福岡の人たちにとって太宰府天満宮って、大きな心の拠り所っていうか、天神とか博多とはまた違う、特別な場所だと思うんですよね。そこでやらせてもらえることのありがたさと緊張感はあります。

ー瓜生さんはどうですか?

瓜生:長尾さんが言ってるように、実際に福岡に住んでる僕たちにとって、本当に太宰府って特別な場所なんですよね。一方で、そもそも福岡にあんまり観光地がないみたいな話ももちろんあるから、実際にしっかり観光地の側面もあるんですけど、本当に歴史のある場所なので、みんなに太宰府のことを知ってほしい。個人的には、僕が長尾さんと初めてデートしたのも太宰府天満宮なので。

長尾:お互いの家族と一緒に行きました(笑)。

瓜生:はい、家族で行きました。津田直さんの写真展をやってたんですね。

長尾:朝倉でイチゴ狩りした後ね。

瓜生:そう!覚えてくれてるんだ、嬉しい(笑)。

ー結構昔の話なんですね(笑)。

瓜生:長尾さんが福岡来てすぐぐらいじゃなかったかな?

長尾:だね。

瓜生:だから、長尾さんとの思い出の場所でもあって、結構感慨深いです。

長尾:実際、僕は太宰府通ってて、すごい人の多さなので、それが怖さでもあるけど、例えば、TOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)があって、そこに修学旅行生が流れ込んでくるってありえないじゃないですか?

ー確かに。

長尾:でも太宰府天満宮は、余香殿の前で集合写真を撮るんですよ。ずらっと並んで。それこそそこで撮影する彼らにも見えるように今回横断幕を設置するので、もしそこでフェアに立ち寄ってくれて、あれなんだろうと、太宰府観光とセットの思い出になって、現代アートやデザインに触れるきっかけになったら最高だなと思っていて。外国から来てる方もたくさんいらっしゃるので、太宰府でやる意味の大きな一つは、参詣客がたくさんいるっていうところ。普段アートに触れることが少ない人たちもたくさん来てるっていうのは、実際のオペレーションは難しいところもあるかもしれないけど、何か面白い化学反応が起きそうで楽しい予感もしてます。

ー修学旅行生が見てくれたら、もちろん全員が入場するのは現実的に難しいと思いますけど、自由行動の時間とかでね、見てくれたらいいですね。

長尾:そうそう。

瓜生:ちょっと話が脱線しますけど、福岡のアジア美術館で、3年に1回で「福岡アジア美術トリエンナーレ」という国際現代美術展があって、僕が中学生ぐらいのときに第1回目が開催されて、同世代の福岡の人で集まると、あのとき始まったトリエンナーレにずっと影響を受けてるっていう話を結構するんですよね。学校で見たポスターとかのビジュアルも衝撃的で。今はもう開催されなくなっちゃってるんだけど、今の話を聞いて、思い出しました。

長尾:来てほしい、若い人に。ON AIRのラジオをそこで聴いて人生が変わったとかね(笑)

瓜生:それいいね!

ーでも本当、そういうのは起こり得るはず。それにアートブックフェアって特殊なイベントの形態というか、他にないかたちでの作家やアートと出会うきっかけになると思うので、初めて行く人には特にインパクトはあると思います。それで自分も参加したいとか、何か作りたいと思ってくれる人が増えるといいですよね。

長尾:そうだね。ちなみにこのインタビュー、黒木くんの言葉は入るんですか?

ーもちろん。というかその、聞き手として。

長尾:黒木くんはTABFで経験があるから、Pagesに何を期待しているかや、どんな思いで関わっているのか聞きたいですね。今回川﨑くんも含めて関係者に同年代が多いじゃないですか。細かいところで影響を受けてきたものは違うけど、同じ時代に社会でやってきて、そういう人たちが、東京とは違う福岡で立ち上げてやってることも含めて、それに黒木くんはフェアに関わる一人一人との関係も近かったりすると思うので、いろんな複合的な視点で見てくれているんじゃないかなと思って。余談かもしれないけど(笑)。

ーいやいや、なんだろうな。福岡は若い人が自分でお店を始めたりすることも多いし、自分と同世代で、独立してどんどん仕事をやってる人たちもたくさんいる。Pagesもそういう人たちが中心となっているから、それがまず良いなと思っていて。あとは、TABFの運営に関わってきて、もっといろんなオルタナティブができたらいいのにっていう思いはずっとあったから。TABFも十年以上続いてきて、マンネリ化してしまう部分とか、規模が大きくなるに連れて、良くも悪くも権威的になっていく部分もある。だからいろいろ新しい企画だったり、新陳代謝するための取り組みをしようとはしているけど、やっぱりゼロから始めることでしか作れないものがあるから。それが単に既存のアートブックフェアへのカウンターとしてだけじゃなく、自分たちがやりたいからやるところから始まっていることが重要じゃないかと思っていて。Pagesはそれをすごい感じるからこそ楽しみだし、自分も少しだけど関わることができて嬉しい。最初は、自分がずっとTABFに関わってきてたから、新しく始まるフェアに半端に関わるのは失礼かなっていう意識もあったんだけど、そんな自意識すら気にせず、川﨑くんや長尾くんたちが一緒にやろうよと声をかけてくれたのも、ある意味福岡らしいのかなと。

長尾:これは深いですね。

瓜生:深くなるよ。

ーやめてください(笑)。でも初回からこんなに大規模にやるんだと、ちょっとびっくりしてるところもあって。もっと小さい会場で、もっと少ない出展者で始めるということも出来たと思うけど、どんどんいろんな人たちが関わってくれて、初回とは思えぬ規模感になっていってる。でもそれも、自分たちの誇れるイベントにしたいっていう真面目な思いだからこそだと思うので。

長尾:それはおっしゃる通り。初回とは思えないね。

ー何回か開催を重ねて、太宰府で開催します!みたいな流れじゃなくて、いきなり太宰府天満宮で開催させてもらえることになって、協賛の方もいて、何より出展する人たちも国内外から集まって、やっぱりポテンシャルの高さを改めて感じます。

瓜生:自分も全く同じ感想で本当にびっくりしてるもん、こんなにしっかりやるんだって(笑)。やっぱり川﨑くんは、強度という言葉をよく使いますよね。やるならめちゃくちゃちゃんとやるっていうか。アートブックフェアに対しては、今までもやらないの?みたいな話はあったみたいだけど、割と慎重だったと思う。でも、それが東さんとの出会いが特に大きかったんじゃないかな。色々整ったとなって初めて、やるつもりだったと思うから。

長尾:ディレクターの人たちを含めて関わってる人たちの向き合い方がそれぞれ違うなっていうのは途中から参加していてすごく思って、川﨑くん、瓜生くん、東さんはじめ、他のメンバーもそうだけど、いい意味で大事にしてる部分が違う。しかもそれをみんな絶対譲らない感じがある(笑)。そこの座標に強い杭が打たれて、テンションが絶妙にかかり合っている感じ。そのバランス感覚は面白いなと思ってるところです。


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