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Fukuoka Art Book Fair

太宰府天満宮にて

2025年4月18日から20日まで

ご来場ありがとうございました!

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インタビュー

それぞれのアートブックフェア vol.1 TOKIO ART BOOK FAIR(東京)

「アートブックフェア」と一口に言っても、どこで誰がどのように作っているのかによって、それぞれ異なる個性や魅力がありつつ、どこかゆるやかにつながっている気がします。ここでは、アートブックフェアを主催するPages出展者のインタビューシリーズをお届けしたいと思います!
第一回は、「TOMOE&フレンズ」で出展したほか、「Editorial Studio」というイベントを企画してくれた黒木晃さんがディレクター、「ENERGY STUDIO + CRX Magazine」の大田拓未さんがアートディレクターを務める初開催の「TOKIO ART BOOK FAIR」です。「TOKIO?」「TOKYO?」とタイトルから謎めいたフェアは、ゴールデンウィークに芝パークホテルで「TOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)」が新体制で新たに立ち上げるフェアです。今回は黒木さんとフェアのチームリーダーである角田芽央子さんに経緯や見どころを語っていただきました。ゴールデンウィークは、ぜひ「TOKIO」へ出かけましょう!


「TOKIO ART BOOK FAIR」を立ち上げることになった経緯を教えてください。

黒木晃(以下、黒木): 1500冊超える選書された本と一緒に滞在できるライブラリーホテルというコンセプトを掲げる芝パークホテルから、ホテルを会場にした新しいブックフェアをやりませんかとお声がけいただいたのがきっかけでした。「TABF」としても、新しい試みを新しい運営体制でできる良い機会だと考え、実施することになりました。

世界中で数多くのアートブックフェアが開催されている中、長く続いている「TABF」というイベントから派生するかたちで、新しいフェアを生み出すわけですが、どういうふうにコンセプトを組み立てたのでしょうか?

黒木:そうですね、やっぱりそこが一番苦労しました。各地でアートブックフェアが増えていていますが、本来は、その場所にアートブックフェアがまだなかったり、それを欲する人たちが自分たちで新しく始めることが、すごく純粋な動機というか、必然性があって、理想的なアートブックフェアが生まれる流れだと思うんです。「TABF」の立ち上げもそうだったと思います。
でも今回は、ある意味フェアとして確立された「TABF」というイベントがある中で、もうひとつのフェアを新しく立ち上げることになり、じゃあ、どういうフェアがあり得るんだろう? というところから始まっています。そうした中で、「TABF」はもともと一般的な出版の形態ではないアートブックを紹介するオルタナティブな存在であり、規模が大きくなった今も、そこは変わらないのではないかと思いました。なので、全く新しいフェアとして、「TABF」のオルタナティブな存在を立ち上げるというよりも、「TABF」のアティチュードとしてブレずにあるオルタナティブな側面に改めて目を向けるフェアを作れないかと考えました。

それが、TOK「I」O ART BOOK FAIRというTOK「Y」O ART BOOK FAIRと一文字違いのタイトルにもつながったのでしょうか?
黒木:そうですね、ちょっとだけ変える方が、その差異や意図が目立つのかなと。1文字だけ変えることによって、パラレルな存在というか、こんなフェアが存在している可能性も示せるのではないかという思いで名づけました。長浜ラーメンの「長浜屋」と「長浜家」の違いのように、ややこしいけど、どっちも美味しいよねみたいな存在になれたら理想です。

「TOKIO ART BOOK FAIR」は、公募を行わず、ホストとなる出展者に声をかけ、ホストがゲスト出展者2組に声をかけるスタイルがとてもユニークだと思いました。

黒木:ブックフェアは誰でも参加できる前提であるべきだと思うので、公募はもちろん考えたのですが、それほど広くない会場なので、公募をかけてしまうと倍率も上がってしまう。TABFへの応募数が増え、参加のハードルが高くなってしまっている中で、新しいフェアもさらに倍率が高くなるとちょっと苦しいというか、前向きな切り口にならないのではと考えたんです。そのときにヒントを得たのは、ドイツを特集した昨年のTABFで同国の出展者たちが和気藹々としている様子や、ステファン・マルクスが関わっていたベルリンの小さなブックフェア「Grotto Books」でした。

角田芽央子(以下、角田): TABF 2024では、ドイツの出展者のブースを一部屋にまとめ、「Grotto Books」の出展者を隣同士にしていたのですが、 そのエリアの出展者は本当に仲が良く、見ていてこちらも楽しくなりました。その雰囲気が来場者にも伝わっていて「友達っていいな」と改めて思いました。一般的な“公平”の価値観とは異なるかもしれませんが、黒木さんからそれぞれが友達を連れてくる形式で出展者を集めるアイデアを聞いた時に、出展者同士のつながりをそのままフェアに持ち込んだ絵を見るのは来場者も面白いのではないかと感じました。

黒木:公式ウェブサイトで、ホストの出展者の人がゲスト出演者を推薦するにあたってのコメントを掲載しています。通常であれば出展者による自己紹介文を掲載しますが、今回はそれぞれの関係性も見えてきてとても面白いので見どころです!

つながりがある出展者同士が並ぶことで、その周辺のコミュニティも見えていいですね!初回の出展者数は何組になるのでしょうか?

角田:18組のホスト出展者がいて、2〜4組に声をかけてくださり合計で54組の出展者が一堂に集まります。

18のコミュニティ、というか友達同士のテーブルが並んでいるんですね! 想像しただけで楽しそうです。フェアの会場について詳しく伺えますか?

黒木:会場は芝パークホテル2階の大きな宴会場のあるフロアを貸切で使用させてもらいます。真っ赤な絨毯、シャンデリア、大きな円卓などがある、いわゆる宴会場なので、その特性を活かした会場構成にしました。

円卓は出展者と来場者の距離感も近くて楽しそうですね。でも、円卓の場合はどうやってお客さんは本を見ることになるんでしょうか?

黒木:それも使い方次第です。出展者と一緒に円卓を囲って座りながら見てもいいだろうし、ぐるぐる円卓を回りながら本を手に取ることもできるだろうし。 その辺もあまりルールを厳しくしすぎないようにしたいなと考えています。 最低限のレギュレーションはもちろんあるんですけど、出展者さんがやりたいことをできるだけ受け入れながら、その提案を一緒に実現できたらいいなと思っています。出展者の数が多くないからこそ、それぞれとコミュニケーションを取りながら準備を進めていけるっていうのも、今回ならではだと思います。

TOKIO ART BOOK FAIRの会場構成は、東葛西1-11-6 A倉庫で「東葛西アートブックフェア」を主宰する髙橋義明さんが手がけられていますよね。東葛西アートブックフェアは、出展者の本に合わせて什器まで作るなど、それぞれの個性を空間でも引き出しているのがすごいなと思っています。今回、出展者と密なコミュニケーションを取りながらそのリクエストに対応していくにあたり、髙橋さんの力も大きいのではないでしょうか?

黒木:「東葛西アートブックフェア」からはすごく影響を受けましたね。僕は出展者として参加したのですが、どんな本を出展するのか各出展者に聞いていて、それぞれのブースを全部彼らが手作りしているんです! ブックフェアというとみんな同じテーブルでと考えてしまいます。もちろん同じ条件であることも大事ではあるんですけど、それぞれ違うことをしているわけだし、それに合わせて考えてあげるのはすごくいいなと。そういう取り組みは、小さな規模だからこそできることかなと思います。

世界初のアートブックフェアである、「NEW YORK ART BOOK FAIR」をモデルにしたフェアが世界各地に広がっていますが、それぞれの土地、運営する人たちによって個性がありますよね。そもそもアートブックフェアの出展者は、「こうあるべき」みたいな固定概念をもっと柔らかい頭で捉え自由に表現している方たちだと思います。「東葛西アートブックフェア」や「TOKIO ART BOOK FAIR」は、アートブックフェアのある意味「型」のようなものに縛られない、出展者の人たちに近い表現の形としてブックフェアを作っている感じがします。

「Pages | Fukuoka Art Book Fair」では「ENERGY STUDIO + CRX Magazine」として出展者してくださったTATA(大田拓未)さんがアートディレクションを手がけていますよね?

TATAくんは、インディペンデントで活動しているアーティストや出版社のZINE、作品集を数多く手がけているデザイナーです。実際、いつもアートブックフェアの直前は同時進行でいろんな本を手がけていて、アーティストの友人はTATAくんのことを「みんなの入稿先」と呼んでいます(笑)。「TOKIO ART BOOK FAIR」ではフェアのコンセプトを伝えて、デザインとして解釈してもらって制作を進めてもらっています。

みんなでビジュアルのコンセプトを詰めていく中で、1文字違いの「TOKIO ART BOOK FAIR」は、「TOKYO ART BOOK FAIR」のオフィシャルなブートレグみたいだなという共通のテーマが立ち上がっていきました。メジャー感はあるんだけど、どこかちょっと、アンオフィシャルな雰囲気もあると思います。

「TOKIO ART BOOK FAIR」をgoogle検索すると、TABFの不正サイトみたいなアラートが出ていましたよね(笑)?

黒木:なりすましサイトだと認識されたみたいです(笑)。普通に考えたら「ウェブ検索に上がってこないサイトってどうなの? 」 となると思うんですけど、でも簡単にアクセスできないというのも、逆に仕組みをハックしてる感じで面白いと思っています。

出展者のブース以外には、どんなコンテンツがあるのでしょうか?
黒木:会期中、出展者が企画するトークやプレゼンテーション、ワークショップなどのイベントも「プロジェクトスペース」で実施します。「TABF」の運営チーム内でも話していることなのですが、「TABF」はフェアの当日はずっと忙しくて、出展者同士の交流の機会が少なく、せっかく作り手同士が世界中から集まっているのにもったいないなと感じていて。でも今回はお酒や軽食も楽しめる「ラウンジ」があったりしますし、小さな規模感なので、より出展者同士の交流の時間を作れる場になればいいなと思っています。

角田:フェアの2日目に「プロジェクトスペース」では、FAXを使って東京、ミュンヘン、マーファの3都市を繋ぐ「SORRY FAX ONLY」というイベントを行います。1985年にヨーゼフ・ボイス、東山魁夷、アンディ・ウォーホルよって行われた「Global Art Fusion」というプロジェクトに着想を得ていて、今回は平山昌尚(東京)、マルティン・フェンゲル(ミュンヘン)、ジャスティン・アルムクイスト(マーファ)が、お互いにFAXでドローイングを送り合います。それらの作品は、最終的にミュンヘンを拠点とする出版社、SORRY PRESSから本として出版される予定です。
 今年の2月に、SORRY PRESSのブックローンチに行った際に「TOKIO ART BOOK FAIR」の話をしたら、突然「そのホテルにFAXあるかな?」って聞かれたんです(笑)。「TOKIO ART BOOK FAIR」の翌週にミュンヘンのホテルで24時間のアートフェアを開催するらしく、ぜひ一緒にやろうとなりました。

そのほかに展示もあるとか?
黒木:シンガポールのデザイナーデュオ、Atelier HOKOによる展示「BOOK?」があります。私たちが無意識のうちに行なっている本にまつわる習慣や、本についての固定観念をいろんな視点から問いかける展示です。例えば、本は通常1人で読むものと考えられているけど、じゃあ2人で読む本があったらどんな本になるだろう? もし大人数で読む本があったらどんなふうになるだろう?というような問いから生まれた空想の本をかたちにしている作品など、本という物質が私たちの読書体験にどういう影響を与えているのか? を検証する作品などが並ぶ、いろんな人たちが楽しめる展示だと思います。

最後に、アートブックフェアを行うモチベーション、その魅力とは何でしょうか?

角田:私はアートブックが好きな理由の一つとして「アートブックが好きな人が好き」というのがあります。アートブック自体とそれに関わる人や場に同じくらい惹かれていて、アートブックを作る人、広める人、そしてそれが好きな人が集まるアートブックフェアは、現実と繋がりながらも、別の安全で優しい世界のような感じがするんです。「TOKIO ART BOOK FAIR」に来てくださる方にも、本だけではなく、それに関わる人の温かさを感じでもらえたらいいなと思っています。

黒木:そうですね。毎回準備はすごく大変ですけど、アートブックフェアに集まる人たちは楽しい人たちばかりなので、フェアが始まると辛かったことを忘れちゃうというか……ちょっと危ない魅力がありますね(笑)。一般的な常識からはみ出してしまってもオッケーになれというか、人と違うことが、そのまま魅力になる場所だと思います。
特に何かを求めていなくても、退屈している時に本屋さんで何かに出会った時の楽しさ、何かと通じ合ったような感覚ってあると思うんです。アートブックフェアも、何かを求めて行くわけじゃないけど、そこに行くと、なんか自分と似ている感覚や価値観を持っている人たちと、それを共有できることがあるのがすごくいいと思っています。別にそれは誰かと競争する必要もないし、お互い違いを認め合えるし、それぞれがそれぞれでいられる場所なのかなと思います。


TOKIO ART BOOK FAIR 2025
by TOKYO ART BOOK FAIR
会期:2025年5月2日(金) ~ 4日(日)
会場:芝パークホテル
住所:東京都港区芝公園1-5-10
Web: https://tokioartbookfair.com/

開催時間:
5月2日(金)13:00-19:00 
5月3日(土)12:00-19:00 
5月4日(日)12:00-19:00

入場料:
一般:1,500円(税込)
25歳以下:1,000円(税込)
19歳以下:無料

※チケット完全予約制
※チケットの発行手数料に別途165円(税込)がかかります。
※会場での当日券販売はありませんが、チケットに空きがあれば、当日でもオンライン予約可能。

主催:一般社団法人東京アートブックフェア、芝パークホテル
協賛:DesignSingapore Council、ビンタンビール、BEAMS CULTUART
協力:Blackmagic Design、オランダ王国大使館


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